顔も脳が動かしています。脳から顔面神経という神経が伸び、顔面の筋肉に命令を送っています。脳や顔面神経に異常が起こると左右片方の顔が麻痺する事があります。
脳が原因となる顔の麻痺
脳の血管が詰まって脳の一部が壊死してしまう「脳梗塞」や、脳の血管が破裂する事で起こる「脳出血」など、脳血管が原因で脳が破壊される疾患を「脳血管障害」といいます。血圧やコレステロール、血糖、喫煙習慣といった脳卒中の危険因子に問題のある方に起こりやすく、損傷した部位によって顔が麻痺する事もあります。脳血管障害では顔だけでなく、同じ側の手や足にも症状がでる事があります。少しでも疑わしい時には脳のMRI検査で脳血管障害が無いか、顔面麻痺を起こす可能性がある様な脳腫瘍や頭蓋骨腫瘍などの病変が無いか確認する事をお勧めします。
ウイルスが原因となる顔の麻痺
実際には顔の麻痺はウイルスが原因のものが殆どです。過去に感染したウイルスが神経の中で生き延びていたものが再び活性化して顔面神経に炎症を起こし、発症すると考えられています。この場合、通常の頭部MRIでは異常はみられません。主に以下の2疾患が知られています。
ベル麻痺
単純ヘルペスウイルスが原因と言われています。突然片方の顔面が麻痺します。朝起きて鏡を見て気がついたり、飲み物が口からこぼれてしまう事で気がつく事があります。一般的には顔面の麻痺以外には症状がみられない事が多く、発症早期から適切な治療を行う事で顔面麻痺を残さず治る事が多い疾患です。
ハント症候群
帯状疱疹ウイルスが原因です。顔の麻痺に先立って耳たぶと周辺の皮膚の痛みがみられ、痛みの領域に帯状疱疹と呼ばれる発赤を伴う小さい水疱が多発します。難聴や味覚異常、めまいを合併する事もあります。ベル麻痺より全体的に重症で後遺症として顔面麻痺が残りやすい傾向があります。
いずれも治療は抗ウイルス薬と神経の腫れを抑えるお薬(ステロイド)を使用します。顔面麻痺をなるべく残さない様、なるべく早く治療を開始する事が重要です。麻痺が重度であったり強い難聴を合併している場合には入院治療が可能な施設をご紹介させて頂きます。又、顔面麻痺が強い間は目を閉じる事が難しくなり、目が乾燥して痛みや炎症の原因になる為、目の乾燥防止のための眼軟膏や点眼も必要になります。